2017年2月1日水曜日

初めて量産出荷を担当した製品のはなし


 このエントリーでは、初めて自分が主担当で量産品の出荷立ち上げを担当した製品のことを書こうと思います。

今まで何回かに渡って特性評価について書いて来ましたが、それは実は今回のエントリーを書くための前準備でもありました。何せ、量産品の出荷の話となると、電気的特性の測定に関するいろんな事が出てくるので、事前に書いて置いた方が良いだろうと思ったのです。

会社に入って、業務実習という形で親会社の製品設計部門へと送り込まれ、256ピンのLSIソケットのハンダ付けから始まった筆者の技術者人生でしたが、第2回目のエントリーでご紹介した評価用LSIの機能・特性評価業務を経て、外部のお客様向けの製品を担当することとなります。

最初に担当した量産品は、とあるアーケードゲームの会社向けのCPU搭載ASICでした。ただ、出荷形態が通常製品と異なることや、当時参画していたCPU搭載ASICの製品シリーズの立ち上げ過渡期で、製品開発の道具立てがあちこちで不完全だったことなどから、普通ならしなくても良い苦労を色々と強いられた思い出深い製品です。



蛇足ながらその製品のお客様、その後家庭用のゲーム機を3機種ほど発売していたことがあり、後年その中の1機種に搭載されたASICのテストも担当することになるのですが、その製品のことはまた別の機会に書こうと思います。


冒頭で普通ならしなくても良い苦労と書きました。そのうち、このエントリーでは出荷形態が通常製品と異なっていたことについて書きます。

通常の半導体製品は、写真製版技術を使って、丸いシリコンウエハの上に何百個もの、製品によっては1000個を超えるLSIを焼き付けて行きます。このブログのタイトル写真に出ているのが、そのシリコンウエハの写真です。

このシリコンウエハの中に出来たLSIを、導電材料で出来た針を使って(これに使用するための針が沢山立ったテストボードを、プローブカードと言ったりします)LSIテスターとつないで、シリコンウエハのままテストします。これをウエハテストと言ったり、プローブテストと言ったりします。私が最初に入った会社では、P検と呼んでいました。

その後、パッケージの厚さに合わせてシリコンウエハの裏側を砥石で削ってウエハを薄く削ります。この工程はバック・グラインドと言います。そのままですね。

バック・グラインドの後、ダイヤモンド砥石を使って1個1個のLSIに切り離してゆきます。これをダイシングと呼んでいます。

ダイシングの後、封止という工程でパッケージングされ、普段目にするLSIの形になります。次に高温で通電、動作させるバーンインという工程を経て、出荷選別、QAのための抜き取り検査を行い、外装袋に梱包してラベルを貼り付けて出荷、という工程を通ります。

なお、バーンイン工程は、製品に意図的に強いストレスをかけて、壊れかかっている回路があるような製造不良ギリギリの製品を破壊してその後の出荷選別で落としてしまうための工程ですが、量産性が悪いこと、テストで高電圧スクリーニングテストを別途やることなどから、民生品では工程が安定したらバーンイン工程を省く場合もあります。

さて、私が初めて担当した製品は、チップ出荷という出荷形態でした。どういうことかというと、シリコンウエハをバック・グラインド、ダイシングした後、封止という工程をやらずに裸のチップのまま出荷する、という出荷形態です。

この出荷形態となったときに問題になるのが、普通はパッケージに封止した後にしかテストしないテスト項目をウエハテストで実施しなければならない、ということです。

そのようなテスト項目がなければ、量産テストの立ち上げがウエハテストだけで済むということでラッキーだったのですが、普通は組立後にしかテストしないテスト項目、これがあったんです。それは・・・・水晶発振テストでした。しかも、マイコンのクロック用と時計用と2つも。

チップ出荷の製品も、特性評価時には手頃なパッケージに詰めて評価をするので、特性評価時は特に変わったところはないのですが、量産出荷テストがウエハテストのみ、ということは、量産時にはシリコンウエハの状態のままで水晶発振テストをしなければならないということです。問題は量産出荷用のウエハテストの立ち上げです。

問題点は2つ、1つはパッケージに封止した状態ではない、ボンディングパッドに針を立てた状態で行う発振テストとパッケージにした状態とで、特性的に違いが出ないかどうか。もう一つは外付け回路をどうやって取り付けるか。

最初の問題は、チップ出荷という出荷形態では避けて通れない問題で、しかも技術的にはどうにもならない問題です。チップ出荷という出荷形態をお客様が選択した時点で、お客様に了解いただくしかありません。この製品が使われる最終形態で水晶発振回路がちゃんと動くかどうかはお客様サイドの責任、ということにするしかないのです。お客様がこれを了承していただけないのなら、チップ出荷という出荷形態はお断りするしかありません。

次の外付け回路の問題は、あまり技術的に高尚な話ではありませんが、これも避けて通れません。

ウエハテストを行うために使用するウエハプローバーという装置があります。その概念図を示します。

(この概念図、東洋電子工業様のホームページを参考にさせていただきました。)

パッケージ品を使った通常のテストを行う場合は、図に示す白塗りの破線で書かれた位置にテストヘッドを置いて、このテストヘッドにテスト用のボード(パフォーマンスボード)を装着し、そのパフォーマンスボードにテストするLSIを装着してテストを行います。

これに対してウエハテストでは、ウエハプローバー内にテストをするウエハ、プローブカード、そしてパフォーマンスボードを装着して、テストヘッドをウエハプローバーの上にかぶせてテストをすることになります。

そして、発振テスト用の外付け回路を取り付けるとすれば、図の中のプローブカードとパフォーマンスボードの間に装着しなければなりません。

図ではプローブカードとパフォーマンスボードの間にはスペースがたくさんあるように見えていますが、実際にはパフォーマンスボードの下側とウエハプローバーの間に高さ5mm程度の隙間があるだけです。

ここに、コンデンサーと水晶振動子、時計の32kHz側にはフィードバック抵抗、これらの部品を取り付けた小基板を取り付けて発振テストが出来るようにしたのでした。

発振テスト自体はパッケージに組んで行った特性評価で十分デバッグ済みでしたが、パフォーマンスボードをウエハプローバーに取り付けたときに外付け基板がどこかにぶつからないか、テストヘッドを下ろしたときに干渉しないかなど、なかなか面倒なデバッグでした。

生産技術部の人と一緒に休日出勤して、現場に入ってデバッグに取り組んだ記憶があります。

この製品は3000個ほど作って生産完了となり、お客様サイドでもあまり数が沢山出なかったと聞いています。そのぐらいの生産数だと開発費の回収もできずに赤字製品だったんではないかと推測します。

しかし、ウエハテストでの発振テストなどということをやる羽目になった製品ということで思い出深い製品です。

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