2017年12月24日日曜日

携帯電話向けASIC・試作評価〜私のキャリアを変えた製品のはなし

論理設計、レイアウト設計を完了して、製品開発はアートワーク工程、マスク作成、試作着工と進んでいきます。

この間およそ1ヶ月弱、ものによってはもっと早い場合もありますが、試作ロットが前工程を流れている間、評価チームや論理設計チームは、測定しなければならない項目の吟味等をしつつ、試作品の評価の準備をします。

ASIC製品では、電気的特性の社外保証項目が決まっているので、何を計るかはあまり気にしません。この製品でも、具体的な数値要求のある測定項目はあるものの、項目自体はどの製品でも測るものなので、あまり深く考えていませんでした。

少なくとも、評価を始めるまでは、そして最初の測定値を見るまでは・・・

2017年12月6日水曜日

携帯電話向けASIC・論理設計〜私のキャリアを変えた製品のはなし

私のキャリアを変えたとも言うべき、携帯電話向けASIC製品の開発は、1997年からスタートしました。

ASIC製品では、中身の回路は基本的にお客様の回路なので、お客様が論理設計をしたネットリストと論理検証用テストパターンを頂いて、それを元に製品開発をスタートするのが普通です。中には仕様受けと言って、お客様から回路仕様を頂いて、それを元にベンダー側が論理設計をすることもありますが、その場合でも回路はお客様のものです。

中には、回路仕様のドキュメントもろくにない、イメージ受けと言っても良いような製品もあるようですが、こういう切り口の開発は、回路仕様の最終的な確認の段階で責任の所在が不明確になるので、トラブルの元かもしれません。

この製品では、お客様の回路はお客様が設計しましたし、製品仕様は明確だったので、そのようなおかしな話にはなりませんでした。

2017年10月30日月曜日

私のキャリアを変えた製品のはなし

はじめに

会社に入ってから8年間、主にテスターの前でうんうんうなっている生活をしてました。そろそろいい加減に生活を変えたいと思い始めていた頃、縁があって結婚することになりました。そしてそれと同じ時期に、ある製品の開発に関わることになりました。

これから何度かに渡って、その思い出深い製品の開発について書こうと思います。筆者にとっては、その後のキャリアを大きく変えたと思える経験で、この製品がなければその後の会社生活も随分違ったものになっていただろうと思います。

1997年、とあるお客様の携帯電話向けのASICを開発するに当たって、若い実務担当者をただ見ていてくれれば良いので、取りまとめるように、という指示があって、製品開発チームに入りました。

製品仕様を見てびっくり。お客様の論理と8ビットマイコン、そして32ビットのDSP機能付きマイコンとその他マイコン周辺機能という盛りだくさんの構成でした。今でこそマルチコアの製品は珍しくありませんが、0.35ミクロン、今風の言い方だと350nmプロセスの世界でこういう盛りだくさんな構成の製品は他に見たことがありませんでした。

そして何よりも、これからどんどん市場が大きくなって行き、技術的にハイレベルとだろうと思っていた携帯電話向けの製品、そしてお客様が当時の日本のエレクトロニクスをリードしていた品川のお客様。

いくら見ていてくれれば良い、とは言っても、初めて経験する製品開発の取りまとめ業務ということもあって、不安と期待が入り交じる気持ちを抱いたものです。クリスタルキングの大都会のような心境ですね。古い話で申し訳ありません。

2017年8月7日月曜日

番外編〜8bit MPUの時代・どうして半導体屋になったのか?

はじめに

2016年6月にスタートしたこのブログ、2017年7月末に10万アクセスを頂きました。非常にありがたいことです。いつもありがとうございます。感激しています。

今回は、10万アクセス記念というわけでもありませんが、いつもと毛色を変えて、番外編として、筆者が半導体メーカーに就職することを決めたきっかけを書こうと思います。

筆者が半導体に興味を持ち始めたのは、学生時代のパーソナルコンピューターとの関わりがきっかけでした。

2017年6月10日土曜日

実機評価でバグ発見! 〜 オーディオI/F編

はじめに


筆者がいたASICの世界では、製品の仕様から論理設計はお客様の担当、論理設計から先が半導体メーカーの担当、という分担となる場合が多いです。

そのようなビジネスの場合、デバイスがお客様が作成したテストベクタ通りに動くことは半導体メーカーで確認できますが、仕様として正しく動くかどうかを確認するのはお客様の担当となります。

製品仕様をお客様が策定する場合、動作仕様を正しく半導体メーカーが理解するのは無理なんです。

そのような製品開発では、半導体メーカーの試作評価は、製造テストをにらんだLSIテスターのみ、ということになり、実装機を使った実使用条件での評価は行いません。

このようなASICの世界にいた筆者ですが、以前「2相クロックの罠」のエントリーで書いた評価用チップの評価以外に、2製品で実装機評価を担当したことがありました。そしてその2製品で、担当した機能ブロックにバグがありまして、まるで当時から将来このような記事を書けと言われていたかのような歩留まりの良さ(笑)でありました。

その2製品のうち、片方は筆者がバグを発見、片方はバグを発見できず、お客様の評価でバグが見つかった、という状況でした。

今回のエントリーでは、私がバグを見つけた、という製品について書きます。オーディオI/Fに潜んでいた、非同期のクロックドメインをまたぐデータ転送のバグに関する話です。

2017年4月11日火曜日

半導体とお風呂の関係とは・・・?

はじめに

タイトルをご覧になって、何のこと?と思われる方も多いと思います。しかし半導体業界でデバイス開発寄りの仕事をしていた方なら、あー、なるほど、と思われるかも知れません。

後ほど種明かしをしますので、ちょっとお待ちを。

先日、「モニターバーンインの知見をお持ちですか?」というお問い合わせをいただきました。ありがとうございます。

モニターバーンインという言葉は、モニターという言葉とバーンインという言葉を繋げたものですが、モニターはいいとして、バーンインっていう単語、これは一体何ですか?というお話から、今回のエントリーを始めていこうと思います。

ちゃんとお風呂と話がつながりますからご安心を。

2017年2月22日水曜日

国際救助隊出動す!・・・ん?

4回目のエントリー「レイアウト設計でawkのお世話になった話」の話の頃、ちょうど1992年から93年頃の、青森県五所川原市勤務の時代に遭遇した、量産立ち上げトラブルの「救助活動」のことを書こうと思います。

ASIC/ロジック系製品の設計拠点立ち上げを目的として、1992年の秋頃から、筆者を含めて3名が青森県五所川原市の田んぼの真ん中に立っていた事業所に転勤し、拠点立ち上げの準備として色々な設計環境整備とか、東京から飛んでくる指示に従って色んな作業をしたりしていました。

そんなある朝、東京から「青森から羽田経由で函館へ行け!今すぐに」という指示が筆者に飛んできて、急遽飛行機を手配して出張に出かけたのでした。

2017年2月19日日曜日

時短ってなんですか? 〜テストタイムのおはなし

テストの話が続きます。なにせ現役時代一番長くやってた仕事なので、それだけお話ししたいネタも多いのです。

時短とは?


時短ってなんですか?ということですが、ここではLSIテストに於ける時短についてのお話を書きます。LSIテストに於ける時短とは、LSIのテストにかかる時間、テストタイムを短くする活動、ということです。

このテストタイム、どれだけ短く出来るかが、テスト業務をやっている人にとってはかなり重い課題です。

2017年2月10日金曜日

メモリーテスト〜フェイルビットマップに関する補足

以前のエントリーでSRAMのテストについて書きました。

この中で、テスターにSRAMのアドレス端子を教えてあげれば、不良を起こしているメモリーセルの物理的な位置を知ることの出来る、フェイルビットマップという便利なものがある、というような内容の説明を書きました。

これについて、若干補足したいと思います。

2017年2月6日月曜日

番外編〜テストにまつわる技術系派遣社員のはなし

1月に、前にいた職場の仲間と年に一度の集まりをしまして、近況報告をしあったのであります。

今回は参加者が少なくて、筆者を入れて5人、そのうち4人がテスト業務経験者という、随分と偏った集まりでありました。そのうち2人が技術系派遣会社に在籍して、派遣社員としてテスト業務に従事しているようであります。

そこで聞いた話によると、職場にいる若い人材、標準で用意されたテストメソッドを使うだけならいいんだけど、そのテストメソッドも中で何をやってるのか理解していないとのこと。

ん〜・・・

前回のエントリーで、テスト自動化を立ち上げようとして上手くいかなかった話を書きました。

その中で、
ちなみに近年のLSIテスターでは、標準的なテストメソッドはテスターメーカーが供給するライブラリに入っていて、GUI仕立ての画面でテストメソッドのアイコンをひもで繋げるとフローが完成、スペックはスプレッドシートから入力、という使い方が普通です。 
プログラムをユーザーが編集するような事は、特殊なテストをしなければならないとき以外ありません。
ということを書きました。こういう世界では、テスターから供給される標準的なテストメソッドは、トラブルがなければ特に中身を知る必要がないと言えばないわけですね。

しかし、せめて、ある測定をする場合には、どのような手順で測定がなされているのかが頭の中にあったうえで、提供されたテストメソッドを使うのでなければ、何かトラブルにあったときに対応できないですし、そもそもエンジニアとしてどうなの?ということになると思うんですよね。技術の幅も広がりませんね。

この先、世の中どうなっちゃうんだろう?と思わずにはいられないひとときでした。

技術を磨かないと、技術系派遣社員の人たちは仕事がもらえないですよ。

2017年2月3日金曜日

初めて量産出荷を担当した話のつづき

前回の「初めて量産出荷を担当した製品のはなし」の中で、普通ならしなくてもいい苦労をしたと書きました。

その中で前回の投稿ではウエハテストで水晶発振回路のテストをしたことを書きましたが、今回の投稿では、ASICの製品シリーズ立ち上げ期で道具立てがあちこちで不完全だったがための苦労について書こうと思います。

ASICのビジネスは、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)が特定用途向けのICの略であることからもわかるように、特定顧客、特定用途向けにLSIを開発して販売するビジネススタイルとなるので、多品種少量生産となります。

他品種少量生産のビジネススタイルで事業をするためには、開発の期間、評価の期間、量産立ち上げの期間をできる限り短くして、お客様に早く製品をお届けしなければなりません。

これに対応するために、論理設計では標準セルライブラリーや各種の機能ブロックライブラリー、実負荷タイミング検証ツール、レイアウト設計では自動配置配線技術、EDAを使ったレイアウト検証技術を使って開発期間を短縮していきました。

テストにおいても、開発期間の短縮、量産立ち上げの短縮のために、テストプログラム/テスト図面の自動生成ツールというものを、設計部、生産技術部、そして生産技術研究所を巻き込んで開発していました。そして、そのツールのβ適用製品が、私が初めて量産出荷を担当した製品だったというわけです。

製品シリーズの立ち上げというものは、最初の頃は製品開発のためのインフラストラクチャーの開発から始まりますが、いつまでもインフラの開発だけ、というわけにも行かず、ある時期からは実際の製品の開発が並行して走るようになります。

つまり、道具立てがしっかり立ち上がっていなくても、それとは別に製品は出荷しなければならないわけです。

しかしそんな重たそうな仕事が、なんで新人に毛の生えた程度の業務経験しかない私なの?っていう気もいたしますけどね。

2017年2月1日水曜日

初めて量産出荷を担当した製品のはなし


 このエントリーでは、初めて自分が主担当で量産品の出荷立ち上げを担当した製品のことを書こうと思います。

今まで何回かに渡って特性評価について書いて来ましたが、それは実は今回のエントリーを書くための前準備でもありました。何せ、量産品の出荷の話となると、電気的特性の測定に関するいろんな事が出てくるので、事前に書いて置いた方が良いだろうと思ったのです。

会社に入って、業務実習という形で親会社の製品設計部門へと送り込まれ、256ピンのLSIソケットのハンダ付けから始まった筆者の技術者人生でしたが、第2回目のエントリーでご紹介した評価用LSIの機能・特性評価業務を経て、外部のお客様向けの製品を担当することとなります。

最初に担当した量産品は、とあるアーケードゲームの会社向けのCPU搭載ASICでした。ただ、出荷形態が通常製品と異なることや、当時参画していたCPU搭載ASICの製品シリーズの立ち上げ過渡期で、製品開発の道具立てがあちこちで不完全だったことなどから、普通ならしなくても良い苦労を色々と強いられた思い出深い製品です。