2016年11月19日土曜日

特性データはどうやって使う?〜テストの実際の最後

今まで何度かにわたってテストの実際をご紹介してきました。

テストの実際を始めるにあたって、テストとは製品出荷のための良品・不良品の判定と、その判定を行うための判定スペックの決定、及びそれに付帯する業務のことであると説明しました。

この判定スペックの決定にあたっては、実際に製品の特性データを測定して、そのデータを吟味し、社外に不良品を出さず、かつ本来良品とすべき製品を不良品と誤判定しないようなスペックを決定しなければならず、時としてスペック決定が難しい状況となります。どんな製品でも最低1項目や2項目はスペックの決定に悩むような項目があるものです。

今回はテストの実際の締めくくりとして、このデータの評価からスペックを決めるというところのお話を書きたいと思います。


動作保証範囲について


半導体製品には動作保証範囲というものがあります。その中に、電源電圧範囲とともに、動作温度範囲が定められています。(電源電圧範囲に似たスペックとして最大絶対定格という電圧が規定されていますが、これはたとえ動作していない状態でも印加したら絶対にダメ、壊れます、という電圧です。)

電源電圧範囲は、LSIテスターで制御できる項目なので、各テスト項目ごとに最大電源電圧、最小電源電圧を印加してテストしますが、温度はLSIテスターで制御することができない項目で、かつ設定が難しい項目なので、保証範囲を網羅するテストをするために、少々工夫がなされています。

動作温度の保証に対する考え方


半導体製品の電気的特性は、一般的に直線の温度依存性を持っていることが多いので、この性質を利用すると、2つの測定温度で特性の測定をして温度特性の直線(傾きと切片)を求めることで、動作保証範囲全体で特性がスペックを満足しているかどうかを推定することができます。

出荷テストの種類と温度特性について


出荷テストでは、一般的に以下の2回のテストを行います。

プローブテスト
シリコンウエハの状態、つまり1個1個のLSIとして切り取る前の状態のシリコンウエハに、プローブカードという、針を沢山立てた測定治具を使って、シリコンウエハ上のLSIとLSIテスターと接続して行う行うテストです。

選別テスト
シリコンウエハからLSIを切り離して、プローブテストで良品だったチップについて組み立てを行い、組み立てた製品に対して行うテストです。
このほかに、品質保証部門が最終出荷前に行うQAテストというものもありますが、これは必ずしも全数検査ではありません。また、半導体メーカーによって、テストの取り扱い方は異なると思います。
この中で、プローブテストでは、シリコンウエハを設置する台(ステージと言います)を高温にすることでシリコンウエハの温度を高温にすることが容易にできるので、プローブテストでは高温でのテストを行います。

そして、組み立て後のテストで常温のテストを実施することで温度直線が求められ、その温度直線によって、低温側の特性もスペックを満足していることを推定するのです。






わかりにくい説明で申し訳ありませんが、温度依存性が直線的であることを利用して、温度条件2点で全温度範囲の保証をしている、ということになります。

プロセスパラメーターと測定値


前項で、電気的特性には温度依存性があると書きましたが、さらに電気的特性にはウエハプロセスのパラメーターに対する依存性というものもあります。

ウエハプロセスのパラメーターには色々な管理指標があって、それぞれに量産時の製造管理幅というものがあります。各社各様でおそらく各社とも社外にはオープンに出来ない情報だと思いますので、詳細は書けませんが、この製造管理幅の範囲内で電気的特性全てがスペックを満足できるかどうかを吟味しなければなりません。

これは故意に各種パラメーターをばらつかせた試作品を作って評価するのですが、キレイにばらついてくれるとは限らないので、プロセスパラメーターの依存性のグラフを描いてみて、そのグラフから外挿して製造管理幅ギリギリでどのような数値になるか推定し、検討します。

ところで、ウエハプロセスのパラメーターが通常の製造管理幅の範囲にあっても、電気的特性値が社外スペックを満足できないことがあります。

静的な測定をするDCテストでそのようなものが出ることはほとんどありませんが、ファンクションテストの動作下限電圧などではたまにあります。

このようなケースでは、スペックを満足できない製品が出にくいように製造管理幅を通常より狭く管理するように製造部門にお願いをする、などという操作をします。

ただし、設計部門が特性評価結果をまとめて設計完了を宣言するドキュメントにその旨記載してしまうと、狭く管理している製造管理幅から少しでも外れたウエハは、次の工程へ渡さずに捨ててしまうことになるので、よほどのことが無い限り設計完了ドキュメントには記載しませんでした。

設計完了のデザインレビューで、製造部門へのお願い事項としてプロセスパラメーターをこの辺に狙ってください、というお願い事をすることで対応していたと思います。

以上、スペックの決め方についてご紹介しました。

製品設計は大体いつもスケジュール通りには進まないものです。しかし、お客様に製品を納める日程は、お客様側になにかトラブルでも無い限り変わることはないので、結果として後ろの工程ほど日程が厳しくなりがちです。

日程に追われながら測定データをまとめて、特性が設計目標を満足するかどうかを見極めて、テストスペックを決めていくのがテストエンジニアの仕事の一番のシビアな部分ですが、これがきちんと出来ているからこそ、正しく動く製品をしっかりとお客様にお届けすることができる、というのが自分のテスト担当時代の自負でありました。

ですから、量産のプローブテストの立ち上げで現場に入ると、いつも胃が痛くなったものですし、「それじゃこれで流しますね〜」っていう現場のスタッフの言葉を聞くと、いつもウルウルしてしまったものです。

自分の担当する製品が量産工程を流れるって、シビアだけど嬉しく、楽しいものですよ。この感覚にひたるために、頑張っていたようなものでした。

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