2016年8月3日水曜日

補足・プルアップ/プルダウン電流のはなし

第8回の「テストの実際(その2・電気的特性)」でプルアップ/プルダウン電流の測定について書きましたが、プルアップ/プルダウン電流ってそもそも何?っていうことを補足しておこうと思います。

結論を先に書くと、フローティング防止のためにI/Oバッファに内蔵されたプルアップ/プルダウン抵抗に流れる電流をプルアップ/プルダウン電流と言います、ということになるのですが、それだと訳がわからないので、以下に詳細を示します。

入力オープンの場合
CMOSはComplementary MOS(相補的なMOS)という意味で、PチャンネルMOS(P-MOS)とNチャンネルMOS(N-MOS)を回路内で同時に使い、P-MOSがオンのときはN-MOSがオフ、N-MOSがオンのときはP-MOSがオフという動作をするように作られています。

この回路の構造から、回路の状態が定まると電源とGNDの間にほとんど電流が流れないので、消費電流が少ない、という性質があります。初期のCMOSデバイスが電卓に好んで使われたのは、これが理由です。

しかしながら、回路の状態が定まっていない状態では、P-MOSとN-MOSの両方が同時にオンしてしまって、電源・GND間に大きな電流がながれてしまうことがあります。これを貫通電流と呼んでします。

この状態を作り出す一番大きな原因が、入力が不定であること、もっと簡単に書くと入力端子に何もつながっていない入力開放、つまり入力オープンによるフローティングです。入力が浮いている、と言ったりします。

プルアップ抵抗付き入力の場合
この状態は、大電流が流れてデバイスが壊れることもあり得る危険な状態なので、CMOS LSIでは、貫通電流が発生しないように、入力端子はかならず電位が固定されるような使い方をしなければなりません。

しかし、オープンとなる可能性があるような場合に対応するために、オープンにしても内部でHレベル固定がなされるようなプルアップ抵抗付きバッファ、内部でLレベル固定されるようなプルダウン抵抗付きバッファというものがあります。

このようなバッファが使われたピンに対して、内部で電位固定されている方向の反対側のレベル(プルアップに対してLレベル、プルダウンに対してHレベル)を印加すると、内部の抵抗を電流が流れます。これがプルアップ/プルダウン電流です。

プルアップ電流はデバイスの電源からピンに向かって、プルダウン電流はピンからデバイスのGNDに向かって流れるので、システム電源の都合やつなぐ相手の都合を考える上で、重要なファクターですね。

一方、プリント基板の設計では、基板パターンを色々な理由から電源電圧の1/2の電圧レベルに終端したり、プルアップ抵抗を使って電源電圧レベルにプルアップすることがあります。

基板のプルアップ/プルダウンが、LSI端子のプルアップ/プルダウンと逆の方向になるような使い方をすると、基板上のプルアップ/プルダウン抵抗と、LSI内部のプルアップ/プルダウン抵抗の抵抗分圧で決まる電位が、LSIに印加されることになるので、貫通電流が流れる原因となります。これにも気をつけなければいけません。

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