2016年7月13日水曜日

第6回〜アナログテストでごめんなさい その2

アナログテストでごめんなさい、第2回目です。

今回は、テスト抜けがあって市場不良を出してしまった話です。

なぜテスト抜けとなってしまったのか、すでに全く覚えていないのですが、原因はともかくどのようなテスト抜けが起こっていたのかは覚えているので、ご紹介します。

LSIのテストは結構長い期間メイン業務としてやっていましたが、担当製品で明らかなテスト抜けが原因の市場不良を起こしてしまったのはこの製品だけです。

しかも、担当から外れていた時期に市場不良が出たので、後始末を他の方がやってくださって、20年近く経った今でも、お客様及び後始末をして下さった方には本当に申し訳なく思っています。

派遣されていた親会社の設計部が、0.5μmプロセス、今風の単位でいうと500nmプロセスのASIC製品シリーズをリリースして間もない頃の製品で、32bitのRISCプロセッサCPUコアを搭載した、マイコン搭載ASICのテストを担当しました。

その製品には、入力10チャンネルの逐次変換型ADコンバーターが搭載されたのですが、これは元々他部署が開発した入力8チャンネルの逐次変換型ADコンバーターの入力チャンネルを増やす改造を行って作ったものでした。

この、増やしたチャンネルについて、テストがなされていなかったために、増やしたチャンネルが動かない製品が出荷されてしまったのでした。

図に印を付けてある部分が全くテストされていなかった、というレポートだったと記憶しています。

対象となるADコンバーターは、複数の入力チャンネルを持っているものの内部でサンプル&ホールド回路付きアナログマルチプレクサで1本にまとめられていて、実際に変換を行うADコンバーターの本体というのは1個しかありません。

この複数の入力チャンネルからの入力を、時分割でADコンバーター本体が変換していきます。

このタイプのADコンバーターの望ましいテストは、

  • 全レジスターのリセット初期値リード
  • 全チャンネルの0値変換テストと結果読みだし
  • 全チャンネルのフルスケール変換テストと結果読みだし
  • 代表チャンネルの詳細な変換誤差のテスト

のような手順で行われるべきと思います。最も望ましいのは全チャンネルで変換精度テストをすることですが、変換精度テストはテスト時間が長いこと、外部にテスト用の外付け回路が必要かつ全チャンネルテストを実施するためには外付け回路が複雑になること、などの理由で、全チャンネルの変換精度テストはしないのが普通です。

その代わり、0V入力とフルスケール電圧入力の変換テストを行って、全ての入力からアナログマルチプレクサまでの配線経路がGNDもしくは電源にショートしていないか、そして配線がつながっているかどうかの試験を行います。これは外付け回路を使わずにLSIテスターの機能試験で実施可能です。

そして、最後に入力チャンネルを代表して1チャンネルだけ、詳細な変換精度テストを行うのです。

それで、今回のテスト抜けについては、おそらく全チャンネルの0値変換テスト、フルスケール変換テストが、追加した入力チャンネルについて実施されていなかったのが原因だと思います。

この製品は、私がLSIテストの実務をやった製品で、テストベクタの作成は別の担当者が行ったはずですが、私からのテストベクタ作成依頼の仕方が良くなかったのだと思うのです。そして、出来上がってきたテストベクタを1ステップずつ目で追いかけて確認すべきでした。それを怠ったのだと思います。

そうでなければ、このような単純なテスト抜けが起こるはずがありません。

テスト抜け発覚後、おそらくテストの追加を行って、この不良は選別段階で取り除かれるようになったはずです。

この製品の量産立ち上げは確か1995年頃、不良返品が来てテスト抜けが発覚したのは1998年頃だったと記憶しています。すでに量産が終わってからでも10年以上経っているはずですが、この一件は未だに気にかかっていて、後悔してます。

しかし、詳細を記憶していないってことは、それだけテスト仕様の検討をきちんとしていなかったということなのだと思います。

すでにこの記事で6回目となるこのブログ、始める前から原因など思い出そうと試みてもやはり思い出せず、かといってこの件は自分の良心にかけて取り上げざるを得ない一件でしたので、掲載いたしました。

内容が中途半端で申し訳ありません。

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